酒本麻衣が2018年の春に書き下ろした長編小説を書籍化!(文庫版サイズ)
<あらすじ>
 14歳の少年、ダンバードル・タマルは、夢の中で、見知らぬ言葉で書かれたメッセージを受けとった。 
「カワイテイルモノガナニカワカッテイタラココマデクルコトハナカッタノニ」
 彼は、生まれた土地、ソルナ村を発つ。身支度を整え、長年ともに暮らした家畜を逃し、井戸に蓋をした。少年の旅の出立の知るものは、誰もいない。 彼は、一人、あてのない旅へでた。 どこへいったらいいのか、なにをしたらいいのか、道しるべは何もなかった。彼は、土の道を歩いた、あるき続けた。
 一週間歩いて、彼は、”灼熱の太陽と雨の降る村”にやってきた。
 そこで、彼は美しい踊りを舞う、老人に出会った。老人の、一挙手一投足に、彼は感動せずにはいられなかった。彼は、多くを尋ねたい気持ちを持ちながらも、先に進むことを選ぶ。
 タマルは、その地に吸い込まれるようにして、”芸術家の街、モンドリアン”にやってきた。
 こんなに大きな街に来たことはなかった。オレンジ色の街灯、石畳の道、そこかしこから漂う嗅いだことのない香り、タマルの心は踊った。街角で、タマルは、ギター弾きの歌に惹かれて、じっと聞いた。癲癇の踊りの歌だった。ギター弾きの名は、ナラトといった。この街に住む音楽家だった。
 ナラトとの出会いは、ダンバートル・タマルの旅を思わぬ方向へ導いていった。
 タマルは、音楽家への道を歩み始めたのだった。
 彼は、ナラトのピアノに合わせて、歌ううちに、知らず知らずに創作の海へ飛び込んでいった。彼は、忘れていた記憶を思い出した。つらい過去は、彼に悪夢を見せたが、歌は、その悲しみさえ愛の響きに包み込んだ。
 タマルは、音楽の魔法を知った。彼は、次々と歌を作っていく。
 モンドリアンでの日々は、あまりに充実し、彼が受けとったメッセージの主を探すことは一旦、止まったように見えた。
 しかし、ある日、タマルはナラトとともに、街の円形劇場で開かれる音楽会へ行く。そこで、タマルは、ドーラ国の少女ナディの歌声に、打ちのめされることになる。ナディとの出会いは、タマルと、そして、ナラトを巻き込み、思わぬ冒険へ発展していく。
 ドーラ国の音楽一族のカシキ族の、悍ましいしきたりの犠牲になろうとしていたナディ。
 タマルとナラトは、老齢の賢者の力を借りながら、不思議な因縁に導かれて、”すべてのものの国、マチス”へ至る道を見出していく。
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